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【Bianca掲載】「旅するようにはたらく」はコミュニティ2.0時代の新たなスタンダードだ 旅するようにはたらく部長・加藤遼がめざす世界

2019.09.19 更新

パソナJOB HUBが提供する「JOB HUB TRAVEL」では「旅するようにはたらく」をコンセプトに、都市部の人材と地域の企業をマッチングするプラットフォームです。都市部で働く人が地域企業の経営に参画できる仕組みです。

どのような思いでサービスを立ち上げたのか。同社事業統括責任者兼旅するようにはたらく部長であり、パソナグループのソーシャルイノベーション担当部長、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師や総務省地域力創造アドバイザー、東京都観光まちづくりアドバイザー、NPOサポートセンター理事、サステナブルビジネスハブ理事を務めるなど、ビジネス・パブリック・ソーシャルのトライセクターで活動する加藤遼氏に話を聞きました。

「旅するようにはたらく」スタイルを、新しい「あたりまえ」にしたい

都市で働く人たちと地域の企業をつなげたいと考え、東京で都市部人材向けのイベントを企画し、実際に都市部人材が地域企業の経営者に会いに行くフィールドワークなどを通じてマッチングを行っています。お互いの理解を深めてから、「自分のスキルや経験を活かしてこんな形で一緒にやりませんか」と、都市部人材側から地域企業の経営者に提案してもらいます。

地域の企業が困っているから助けに行こうか、ではなくて、都市部人材が地域企業の魅力に「惚れる」デザインが重要だと思っています。もちろん事業内容やスキルマッチングも大事ですが、一番重要なのは「共感」です。そのために、何度も機会をつくって、お互いを理解する場を設計しています。恋愛に近いですよね。

「旅するようにはたらく」スタイルを、新しい「あたりまえ」にしたいです。

そもそも、この事業を始めようと思ったのは、生産者と消費者の距離が広がって、消費者ばかりが増えていくことに危機感を覚えたからです。観光振興政策は「地域の消費を増やしましょう」というものが多いですが、地域の生産を増やす政策は少ないです。でも地域の魅力や強みをつくっているのは、そこにいる生産者です。だから旅するようにはたらきながら、地域の生産者側に参画する人を増やしたいと思っています。

これまでの人材ビジネスとしてだけではなく、いくつか新しいビジネスモデルを考えています。まずANAホールディングスさんと業務提携して、ラーニングツーリズムとして旅行事業を展開しています。

旅行の定義を変えたいと思っています。これまでの旅行は消費活動が中心でした。宿に泊まる・ご飯食べる・体験する・お土産を買う。でも「旅するようにはたらく」ことが新しいあたりまえになれば、旅行そのものが地域での生産活動に繋がります。旅行に行きたいなと思った時、旅行情報サイトを見るとホテルや体験ツアーが載っていますよね。そこに地域の企業の「仕事検索」も出てくるのがあたりまえにしたいと思っています。

いまAirbnbさんと組んで、地域の仕事と滞在先の情報をセットにした発信を始めています。

「コミュニティ2.0」時代の新しいビジネスモデルとは?

コミュニティの形が徐々に変わっていますよね。コミュニティの一番強い形は、昔は血縁でした。血のつながった家族や親戚関係。次に地縁。同じ場所に住む人たちのコミュニティ。そして近現代、急速に強まったのが仕事縁、会社縁ですよね。会社が一種のコミュニティになってきました。

そしてインターネットによって劇的に広がったのが趣味縁。趣味が同じ人たちが遠隔地でもつながりやすくなりました。2011年の東日本大震災後には、価値観縁が広まったと思います。あの時、復旧支援に立ち上がったのは、被災地に血縁や地縁、仕事縁がある人たちはもちろん、そうでなくても困っている人の役に立ちたい、自然を大事に思う人たちは倫理感で仲間とつながりチームになってすぐに動いていました。倫理観縁でつながるコミュニティというのもあると思います。

やはり1995年のWindows95発売、そして何より2007年のiPhone登場を境に、コミュニティの形が劇的に変わったように思います。それまでは、どうしても物理的な近さがコミュニティの形成要因として大きかったのが、インターネットの普及によって、物理的な距離と関係なく、趣味や価値観で世界中の人たちとつながれるようになりました。ある意味、それまではコミュニティが生まれた場所や働く場所に限定されていたものが、インターネットなどを活用して、自分で複数の多様なコミュニティを選べる時代に突入しました。

そんな風にコミュニティの形が変わってきているわけですが、血縁や地縁、会社縁でつながっていた「コミュニティ1.0」時代の経済と、趣味縁や価値観縁でつながる「コミュニティ2.0」時代では、経済活動も大きく変わってきます。

シェアリングエコノミー(共助経済)やコミュニティ通貨もそうですよね。趣味縁でつながっているコミュニティのメンバーの間で経済が回る。地域通貨というのは昔からあって、地縁コミュニティで流通する前提でつくられているものが多かったのですが、地縁コミュニティだけの時代じゃなくなってくるので、趣味縁のコミュニティ通貨とか、倫理観縁のコミュニティ通貨があってもいいと思います。

そうした潮流が現れ始めている一方で、「コミュニティ1.0」の思想のまま進めているプロジェクトが結構多いです。コミュニティのあり方が変わってきているのに、ビジネスがアップデートされていない。昔の思想のまま踏襲されています。でも「コミュニティ2.0」の時代には、それに合った事業開発やプロジェクト開発のあり方があるはずです。

サーキュラーエコノミーのヒントは日本人には馴染みの深い考え方?

「SDGウェディングケーキモデル」ってご存じですか? SDGsの17個のゴールを3つの層に分類したもので、一番下が環境。真ん中が社会。一番上が経済となっています。私は、自然がもたらす環境があってはじめて社会が成立して経済が回ると捉えています。

我々が考えていかなければならないのは、環境哲学を持った経済と 環境哲学を持った社会だと思います。その時、コミュニティが主役で経済ができていくとすれば、環境も同様に、コミュニティありきで考えていく必要があると思います。

コミュニティが主役で環境を考えるって聞き慣れないような気もしますが、実は日本人には馴染みの深い考え方だと思います。日本人は自然環境に日々感謝しながら、自分たちの社会や経済のあり方を考えてきた歴史があります。日本の農村地域に伝承する循環型農業などはその代表例だと思います。

2015年にEUでサーキュラーエコノミー採択がされました。つまり持続循環型経済です。環境問題が深刻化する中、これからリニアエコノミー(直線型経済)からサーキュラーエコノミー(持続循環型経済)の時代にならざるを得ないと思います。そうなった時、サスティナブルなサプライチェーンを組める、ビジネスモデルを創れる、そういう思想で会社を経営できる人材が求められるようになります。その時、従来型のリニアエコノミーの知識を机上で学ぶ人材育成プログラムよりも、実際にシェアリングエコノミーやサーキュラーエコノミーが実現されている地域での実践的なプログラムが大事になります。「旅するようにはたらく」JOB HUB TRAVELは、サーキュラーエコノミー時代の実践型人材育成プログラムにもなりえます。

日本だからこそ、SDGsで世界のイニシアティブを取れる

東京2020に向けてホストタウンという取り組みがあります。たとえば徳島県だったらドイツとカンボジアの選手とその家族を受け入れながら文化交流をするというもので、ホストタウン登録は全国で400自治体を超えています。東京2020期間中にホストタウンと相手国の協働によるサーキュラーエコノミープロダクトを世界に発信したいと思っています。

「旅するようにはたらく」人たちが、ホストタウンの地域企業とつながって、サーキュラーエコノミープロダクトを開発して、東京2020の機会に世界に発表できたら素敵だなと思っています。
2020年の東京大会でのホストタウンの取り組みから得られる学びを、2024年のパリ大会にシェアしながら、世界中の様々な地域と国が協働するモデルとして確立したいです。ホストタウンという仕組みそのものが、グローバルな連携によってサーキュラーエコノミーのイノベーションを生むプラットフォームになり、2025年大阪万博のテーマはSDGsですから、そこにも繋げていくことができたら素敵だと思っています。

グローバル資本主義の動きそのものは、なかなか止めようがないと思います。でも、グローバルサプライチェーンを持続循環型にしていくことはきっとできるはずで、日本がホストタウンという仕組みの展開を通じて、サーキュラーエコノミー(持続循環型経済)推進のグローバルなイニシアティブを取れるのではないかと思っています。

そのための第一歩としては、日本の都市で働く人たちが、地域に目を向けること、地域で生産者側にも回れる仕組みがやはり大事だと思います。旅するようにはたらくことのインパクトはそこにあると思っています。

コミュニティ経済の本質は「協同組合」にヒントがある

コミュニティ経済の本質が、協同組合にヒントがあると思っています。

協同組合は、コミュニティ経済の原型の一つです。共同出資・共同経営・共同生産・共同消費。みんなで組合員として出資して経営に参画し、安心できるものをみんなで生産して、みんなで消費する仕組みです。シェアリングエコノミー(共助経済)の元祖のような感じがします。資源回収システムもありますし、商品開発にも循環型の思想が活かされています。
コミュニティ2.0の時代、協同組合が多様なコミュニティ運営に有効なモデルになり得ると思っています

近現代は、資源は無限であるという前提で社会と経済が拡大してきました。環境問題の深刻化を背景に、資源が無限ではないという現実を突きつけられている今、コミュニティの役割は、シェアリングエコノミー(共助経済)やサーキュラーエコノミー(持続循環型経済)の実現に自然とシフトしていきます。そして、シェアリングエコノミー(共助経済)時代のコミュニティ経済モデルは、協同組合にヒントがあるし、サーキュラーエコノミー(持続循環型経済)時代の地域や企業の経営は、日本人が昔から持つ自然を大切にする価値観や精神性にヒントがあると思っています。

シェアリングエコノミー(共助経済)やサーキュラーエコノミー(持続循環型経済)の実現に共感してくれる方がいれば一緒に事業やプロジェクトを共創したいと思っています。

【掲載元】https://bianca.id/archives/248

 

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